非生産的座談会

会長、副会長、書記はと麦

【小説】かいじゅうがでた

授業中気持ち悪くなったのでトイレに駆け込んで吐いた。そしたら俺の中から変なものが出て来た。

「よお」

「............」

「よお」

「......こんにちははじめまして」

「ああーお前そういうやつなんだこっちがよおってフランクな感じで話しかけてるのにはじめましてとか言ってなんなら敬語使っちゃって壁作っちゃうタイプなんだ」

「......」

「ふーん、友達いなさそうだねよかったね」

よくないよ。よくないというかあなたはなんなんだ。あなた?

お昼休みに食べたメロンパンと牛乳に混ざってピンク色のカブトムシの幼虫みたいなものがピクピクしている。正直キモい。それが喋るんだからもっとキモい。喋る時にはまぶたのようなものがぱちぱち動く。

「あなたのお名前は」

「あ? 俺に名前があると思うのかウケるわ。名前なんかいらねえよ好きに呼んでくれ」

げえっげえっげえっと変な音が聞こえる。それってもしかして笑ってるの。

「でもでもそれは困りますよ名前は縛るんですよ、見ず知らずの幼虫に僕なんかが名前つけちゃダメです」

「めんどくさー! もう一回言うよめんどくさー! いいよわかったよじゃあ怪獣って呼んで。お前らのとこじゃ俺のことそう言うんだろう」

「じゃあじゅーちゃんて呼びますね!」

「.......好きに呼べよ」

 

とりあえず俺のゲロの中にそのままいるのは嫌だと言うし言葉を話して生きてるようなものを流しちゃうのも忍びなかったのでポケットに入れて教室に荷物を取りに戻った。大丈夫、じゅーちゃんはちゃんと水道で綺麗に洗えたと思う。

「真面目くんだと思ったけど授業途中で帰るのな」

「だってじゅーちゃんが授業中に死んだら後悔します。プルプルしてるからお水につかってないと死んじゃいそうで」

「うん、まー、別しそうなったらそうでしゃーないけどな。ありがとな」

自販機でペットボトルのジュースを買ってすぐに飲み干し、上の細くなってる部分をカッターで切り落として容器を作った。水とじゅーちゃんをそこに入れる。大学は変なことをやってる人が多い。即席水槽を持って歩いてる人がいても誰もなんとも思わないだろう。友達もいないからそれなあに、なんて話しかけられる心配もない。

「この後どうするんだ」

「家に帰ります、10分くらい耐えてください。一人暮らしですからとりあえずなんとかなります」

「俺を生かすのか」

「喋りますからね」

またげえっげえっげえっと笑う。その笑い方好きじゃないなあ。

 

「どこから来たんですか」「見てただろお前の腹ん中からだ」「じゅーちゃんはなんなんですか」「怪獣だよ怪獣。育ててみろよおっきくなるぜ」「大きいのは困るのでできればちっこいままでいてください。小型犬くらいがいいですね」「人型にもなれるぞ俺の可能性は無限大だ」「俺の可能性は無限大......」「笑うな。生かしてくれたお礼をしてやってもいい、なんでも言ってみろ」「ええ〜! いいですよおじゅーちゃんになにができるんですかそんなぷるぷるのくせにい!」「くせにって言うなよ傷つくだろ」「じゅーちゃん男なんですか」「そういうのはよくわからんが育てばいつかはたぶん子ども産めるな」「ふーん」

じゅーちゃんはそれからすぐに水を大量に飲んだ。水以外はどうでもいいと言わんばかりに飲んだ。飲むとそのぶん大きくなった。最初は俺の指先から一滴一滴不自由そうに飲んでいたのに、腰に手を当てて風呂上がりのおっさんのように水を飲み干すじゅーちゃんはもう普通の大人の人間と見分けがつかない。手足がすらっとしていてまつげなんかばちばちだ。俺の服を着ているけどあんまり似合ってない。

「俺、スーツが似合うんだよ」

「そうなんですか」

「そうなんだよ。そういう設定」

「見た目は人間でも、やっぱりぷるぷるなんですね」

「まあな。おれのチャームポイントだからな」

 

打つの疲れたので今回はここまで。